第四話 でてきちゃった赤ちゃん


この施設で働いていると緊急事態によく出くわします。

その時は、現地のドクターもナースもいない夜間が多いです。

患者さん同士が、喧嘩して、どうしたらそんな風に大きな傷口が出来るのかわからないぐらい何かを使って、切られて腸が見えてしまって血が吹き出している子。

 

最初は止血のしかた、こういう緊急時の対処、かなり焦りました。

 

私が寝泊まりしていたところは、患者さんの病棟と同じ棟で夜みんなの苦しむ声や泣き声が聞こえてきて、すごくせつないです。

夜間は、男性患者が女性患者を襲いにいかないように、施設内には大型の危険な犬達が放されます。だから、私達も部屋から出ることはできなくなるのですが。

 

この部屋の上は精神障害の子供たちの病室の下にあってしかも天井が水漏れ。

その水漏れの原因は上の階の子ども達のトイレから。

何個所もあって、汚物まじりの水漏れだからかなり匂いが…でした。

バケツおいて、他のボランティアの子とは天然の滝だねぇ…。なんて笑ってました…。

 

いつものように夜ごはんを患者さんたちと話しながら食べていたら、他の病室の患者さんが、チャラカー来て!って呼びにきました。

なんだろうって思って、停電してたから、ろうそくをもってその子と一緒に違う病室にはいって、その子の連れていってくれたベッドの子のところへ。

 

その女の子は、がりがりにやせこけた10代半ばの子で、妊娠していました。

毛布をめくると血にまみれた、やっと人の形をした赤ちゃん。

まだ4ヶ月~7ヶ月ぐらい?しかお腹の中にいなくて、泣く事も出来ない赤ちゃん。

レイプで出来ちゃった赤ちゃんだけど、その女の子は自分の初めての妊娠、赤ちゃんをとっても楽しみにしていたのに。

 

呆然としていた女の子にかけてあげる言葉なくて、ほっぺにキスしてハグして。チャラカ…。ってだけその子は言って。

 

 

その女の子も数日後亡くなってしまいました。

妊娠もHIVも売春だけではなく、レイプの被害もとても高いです。レイプされて妊娠して、HIVにもなってしまって。

 

本当にやりきれません…。

 

2007年3月30日 原題「でてきちゃった赤ちゃん」